買ってはいけないジビエ

近年人気上昇中のジビエ。
SDGsへの関心の高まりや野食系YouTuberの活躍で、興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

鹿や猪、熊に野鳥など、インターネット上にはさまざまなジビエの情報が溢れています。
ジビエを専門に取り扱う店だけでなく、一般的な居酒屋のメニューにジビエを使った一品が載ることも増えてきました。

これを読んでいる方の中にも、珍しさに惹かれジビエを食べてみたいと思っている方がいるのではないでしょうか。

でも少々お待ちください。
ジビエは管理飼育されている家畜とは違い、何を食べてどう育ったかわからない動物の肉。
食べるにはリスクがあることを知り、適切な調理をする必要があります。

急速なブーム拡大に伴い、危険な食べ方で提供する店や実際に食べたという報告も散見されるようになりました。

リスクを軽視した食べ方は、健康被害に繋がりかねません。
本記事ではこうしたジビエのリスクについてまとめます。
是非最後までご覧いただき、安全なジビエを選ぶ際の参考にしていただければ幸いです。

「お店で出しているから大丈夫」ではない

まず前提として、お店で提供している料理なら安心、というわけではないことを念頭に置かなければなりません。
残念ながら危険なメニューを提供する店は一定数存在します。

飲食店を開業する際には食品衛生責任者の資格を有する者を、各施設につき1名置かなければならないこととなっています。
しかし、飲食店で提供された料理による食中毒は後を絶ちません。

たとえば、腹痛などを引き起こす食中毒菌「カンピロバクター」の食中毒は、そのほとんどが飲食店で発生しています。
カンピロバクターは適切な加熱によって死滅し、病原性を失うため加熱不足で提供していた飲食店がそれだけ存在していたということになります。

丁寧に盛り付けられた写真などからプロが作っているのだから安心、と思ってしまいがちですが、そうではない場合があるということをご留意ください。

筆者はとある居酒屋で「鹿肉のタタキ」がメニューにあるのを目撃しました。
ジビエの生食は厳禁です。外側のみに火を通して、中心部は生のままで提供されるタタキも同様です。
鹿肉には多種多様な寄生虫が存在し、その汚染は内臓だけでなく肉の内部にも及びます。

これらは丁寧に捌いたからといって取り除けるものではありません。
前述の居酒屋は、これらのリスクを軽視して提供していたと思われます。

お店で出されているものだから大丈夫と思わず、疑いの目を向けることも時には必要です。

「新鮮だから大丈夫」ではない

よく聞く言葉に「新鮮だから、生で食べても大丈夫」というものがあります。

確かに馬刺しなど、一部の肉は生で食べられています。
ですがこれはきちんとした衛生管理のもと飼育、流通した肉であるからこそ可能なのです。
馬は体温が高く、病原体が繁殖しにくいことやこれまでの調査でも安全が確認されていることなどを前提に、国の定める厳しい規格のもとで例外的に生食が認められています。

このような前提のないジビエを生食するのは大変危険です。
野生鳥獣の肉であるジビエには、馬にはいない寄生虫や病原体が多数存在しています。

新鮮であれば菌類の増殖こそ少ないかもしれませんが、その分中にいる寄生虫も新鮮ということになってしまいます。
たまに「鹿を刺身で食べた」などの話を聞くことがありますが、真似してはいけません。
新鮮であっても、ジビエはよく火を通してから食べましょう。

「冷凍したから大丈夫」ではない

「冷凍したら寄生虫って死ぬんじゃないの?」と思う方もいるかもしれません。

確かに魚に寄生するアニサキスなどの寄生虫は冷凍で死滅します。
だから魚は一旦冷凍した後に解凍することで、安全に生で食べられるのです。
しかし、肉の場合は話が違います。

イノシシやクマなどの肉に寄生する旋毛虫(トリヒナ)は低温に強く、冷凍環境下でも死滅しません。
感染すると腹痛や発熱を起こし、重篤な場合は全身の浮腫や肺炎、心不全に至ります。
これらの肉を刺身など生で食べることは大きなリスクを伴います。

仮に食べた直後に下痢や嘔吐などの異変が起きなかったとしても、食中毒の中には数週間の潜伏期間を経て発症するものもあります。
「一旦冷凍したから大丈夫だ」と思わず、ジビエの生食は避けるようにしてください。

安全で楽しいお食事を

ここまでジビエの危険な食べ方についてお伝えしてきました。

ジビエを食べる際はしっかり肉の中心部まで加熱調理したうえでお召し上がりください。
衛生管理に信頼が置けないな、と思ったお店は避けることも重要です。

また、数日後から数週間後に症状が出ることもあり得るためジビエを食べた後には体調を注意深く観察し、異変があれば医療機関に相談しましょう。

正しい知識を持って喫食するならジビエはおいしい食材です。
適切にジビエを取り入れて、楽しいお食事をお楽しみください。

タイトルとURLをコピーしました