監修医師
おおこうち内科クリニック
大河内 昌弘
名古屋市立大学病院、愛知県公立尾陽病院で内科医として勤務した後、アメリカルイジアナ州立大学生理学教室に留学。
その後、厚生連尾西病院内分泌代謝科部長、名古屋市立大学消化器代謝内科学 臨床准教授を経て、平成24年10月におおこうち内科クリニック開業。
日本内科学会専門医、日本糖尿病学会専門医、日本消化器内視鏡学会指導医、日本消化器病学会専門医、平成15年学位取得。
痛風の原因は尿酸の結晶化
尿酸は、プリン体が分解された後に産生される物質です。
血液中の尿酸が7.0mg/dL以上になると過剰な状態であり、「高尿酸血症」とよばれます。
尿酸は通常体内に一定量保たれていて、多くなると汗や尿などに排泄されてバランスを保っていますが、過剰になると結晶化します。
尿酸が血液中に過剰に存在するとどうなってしまうのでしょうか。
このような状態になったとしてしても、自覚症状があるわけではありません。
尿酸値が高い状態が長期間続き、尿酸の原料であるプリン体を多く含んでいる肉類やアルコール類を摂取すると、尿酸ナトリウム結晶の結石が生成しやすい状態になります。
尿酸ナトリウム結晶は、ウィルスなどとは違い結晶自体は生きているわけではありません。
単なる尿酸の塊に過ぎず、白血球が排除しようとしても、結晶そのものは減少しません。
プリン体含有量の多い肉類やアルコール類の過剰摂取により、尿酸ナトリウム結晶が生成されやすくなります。
生活習慣が乱れ、そうした食品を過剰に摂取していると尿酸値が上がり、痛風が起こりやすくなるのです。
生活習慣において改善するべき点として、バランスのとれた食生活、暴飲暴食を避ける、適度な運動、睡眠不足の改善があげられます。
これらは痛風だけでなく、高血圧症、高脂血症(脂質異常症)、糖尿病などさまざまな病気の原因にもなりますので日頃から節制を心がけましょう。
アルコールと痛風
アルコール摂取量と血清尿酸値に関しては医学的にもいろいろな検討がなされています。
血中のアルコール濃度と血清尿酸値の上昇は概ね相関することが知られ、たとえばある研究では血中アルコール濃度50-100 mg/dL では、血清尿酸値にはほとんど影響がないものの、100-225 mg/dL になると血清尿酸値は13-24%上昇したという結果が得られています4)。
ちなみに、血中アルコール濃度50-100 mg/dLというのはほろ酔いくらいの状態で、100-225 mg/dLというのは完全に酔っぱらっている状態です。
300 mg/dLになるとお酒でつぶれてしまっている状態です。
また、血清尿酸値ではなく痛風発症をアウトカムとして相対危険度をみた研究では、飲酒しない人を1として、1日平均10.0-14.9 gのアルコールを摂取する男性では1.32、1日平均15.0-29.9 gでは1.49 、30.0-49.9 gで1.96、50 g以上では2.53に上昇しました1)。
ビール500ml、日本酒180ml (1合)でアルコール約20 gですから、「毎日日本酒2合を飲んでいる」という人は約2倍の痛風発症リスクがあるということですね。
適量の飲酒であれば血清尿酸値の上昇は有意ではなかったという研究結果2)や、アルコール飲料の種類によってリスクの程度が異なる1, 3) とする報告もあるので、ほどほどの飲酒の高尿酸血症と痛風発症のリスクについてはケースバイケースといえるでしょう。
1) Choi HK, Atkinson K, Karison EW, et al. Alcohol intake and risk of incident gout in men: a prospective study. Lancet 363: 1277- 1281, 2004.
2) Li Z, Guo X, Liu Y, et al. The relation of moderate alcohol consumption to hyperuricemia in a rural general population. Int J Environ Res Public Health 2016; 13, 732; doi: 10.3390 / ijerph13070732.
3) Choi HK, Curhan G. Beer, liquor, and wine consumption and serum uric acid level: The third national health and nutrition examination survey. Arthritis Rheum 51(6): 1023- 1029, 2004.
4) 森脇 優司, アルコールと尿酸, 痛風と尿酸・核酸43巻2 号131.